バイタルサインとは
バイタルサイン(vital signs)は、生命徴候とも呼ばれ、人間の生命活動の基本的な指標です。
バイタルサインには以下の5つがあります:
- 体温(Body Temperature:BT)
- 脈拍(Pulse Rate:PR)
- 血圧(Blood Pressure:BP)
- 呼吸(Respiratory Rate:RR)
- 経皮的酸素飽和度(SpO2)
これらを正確に測定し、異常を早期に発見することは、看護師の最も重要な役割の一つです。
正常値一覧
成人の正常値
| 項目 | 正常値 | 単位 |
|---|
| 体温 | 36.0〜37.0 | ℃ |
| 脈拍 | 60〜100 | 回/分 |
| 血圧(収縮期) | 90〜140 | mmHg |
| 血圧(拡張期) | 60〜90 | mmHg |
| 呼吸数 | 12〜20 | 回/分 |
| SpO2 | 96〜100 | % |
小児の正常値
| 年齢 | 脈拍(回/分) | 呼吸数(回/分) | 収縮期血圧(mmHg) |
|---|
| 新生児 | 120〜160 | 30〜60 | 60〜90 |
| 乳児 | 100〜140 | 25〜40 | 70〜100 |
| 幼児 | 90〜130 | 20〜30 | 80〜110 |
| 学童 | 70〜110 | 18〜25 | 90〜120 |
小児看護の詳細は、小児看護学の対策を参照してください。
体温測定
測定部位と特徴
| 部位 | 特徴 | 測定時間 |
|---|
| 腋窩 | 最も一般的、低めに出る | 5〜10分 |
| 口腔 | 腋窩より0.5℃高い | 3〜5分 |
| 直腸 | 深部体温に近い | 1〜3分 |
| 鼓膜 | 迅速、深部体温に近い | 数秒 |
腋窩検温の手順
- 患者さんに説明し、同意を得る
- 腋窩の汗を拭き取る
- 体温計の先端を腋窩の中央に当てる
- 上腕を密着させる
- 測定終了まで安静に
- 体温計を取り出し、数値を確認
- 結果を記録する
異常値と対応
| 状態 | 体温 | 対応 |
|---|
| 低体温 | 35.0℃未満 | 保温、原因検索 |
| 微熱 | 37.0〜37.9℃ | 経過観察、水分補給 |
| 中等度発熱 | 38.0〜38.9℃ | クーリング、解熱剤検討 |
| 高熱 | 39.0℃以上 | 医師報告、解熱処置 |
脈拍測定
測定部位
- 橈骨動脈:最も一般的
- 頸動脈:緊急時、ショック時
- 上腕動脈:血圧測定時
- 大腿動脈:蘇生時
- 足背動脈:末梢循環の確認
橈骨動脈での測定手順
- 患者さんに説明し、リラックスしてもらう
- 手首を安定させる
- 示指・中指・薬指の3本で橈骨動脈を触知
- 時計を見ながら15秒×4または30秒×2で測定
- 不整がある場合は1分間測定
- リズム、強さも確認
- 結果を記録する
観察ポイント
- 回数:1分間の拍動数
- リズム:整か不整か
- 強さ:強いか弱いか
- 緊張度:硬いか軟らかいか
異常値と対応
| 状態 | 脈拍数 | 考えられる原因 |
|---|
| 徐脈 | 60回/分未満 | 薬剤、甲状腺機能低下、房室ブロック |
| 頻脈 | 100回/分以上 | 発熱、貧血、心不全、脱水、不安 |
血圧測定
測定前の準備
- 5分以上の安静
- カフェイン・喫煙後30分以上経過
- 排尿を済ませる
- 適切なサイズのマンシェット選択
測定手順(触診法→聴診法)
- 患者さんに説明し、安静にしてもらう
- 上腕を心臓の高さに
- マンシェットを上腕に巻く(指2本入る程度)
- 触診法:橈骨動脈を触知しながら加圧、脈が消失する圧を確認
- 聴診法:触診法より30mmHg高く加圧
- 聴診器を上腕動脈に当てる
- 2〜3mmHg/秒で減圧
- コロトコフ音が聞こえ始めた点=収縮期血圧
- コロトコフ音が消失した点=拡張期血圧
- 結果を記録する
測定時の注意点
- マンシェットは心臓の高さに
- 衣服の上から測定しない
- 初回は両腕で測定
- 連続測定は1〜2分間隔を空ける
血圧の分類(日本高血圧学会)
| 分類 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 |
|---|
| 正常血圧 | 120未満 | 80未満 |
| 正常高値血圧 | 120〜129 | 80未満 |
| 高値血圧 | 130〜139 | 80〜89 |
| Ⅰ度高血圧 | 140〜159 | 90〜99 |
| Ⅱ度高血圧 | 160〜179 | 100〜109 |
| Ⅲ度高血圧 | 180以上 | 110以上 |
呼吸測定
測定方法
呼吸は患者さんに気づかれないように測定します(意識すると呼吸パターンが変わるため)。
- 脈拍測定に続けて行う(患者に気づかせない)
- 胸郭または腹部の動きを観察
- 30秒×2または1分間測定
- リズム、深さ、努力性の有無も観察
- 結果を記録する
観察ポイント
- 回数:1分間の呼吸数
- リズム:規則的か不規則か
- 深さ:深いか浅いか
- 努力性:肩呼吸、鼻翼呼吸、起座呼吸など
- 呼吸音:喘鳴、ラ音など
異常呼吸パターン
| 名称 | 特徴 | 原因 |
|---|
| 頻呼吸 | 25回/分以上 | 発熱、肺炎、心不全 |
| 徐呼吸 | 12回/分未満 | 薬剤、脳圧亢進 |
| 過呼吸 | 深く速い呼吸 | 代謝性アシドーシス |
| チェーンストークス呼吸 | 周期的に深さが変化 | 心不全、脳障害 |
| クスマウル呼吸 | 深く大きい呼吸 | 糖尿病性ケトアシドーシス |
SpO2測定
測定方法
- プローブを指先(または耳たぶ)に装着
- 安定した数値が出るまで待つ(数秒〜数十秒)
- 数値と脈拍を確認
- 結果を記録する
測定時の注意点
- マニキュアは外す(または別の指で測定)
- 冷感がある場合は温める
- 体動があると正確に測定できない
- 強い光の下では影響を受けることがある
- 末梢循環不全では正確に測定できない
異常値と対応
| SpO2 | 状態 | 対応 |
|---|
| 96%以上 | 正常 | 経過観察 |
| 93〜95% | 軽度低下 | 酸素投与検討、原因検索 |
| 90〜92% | 中等度低下 | 酸素投与、医師報告 |
| 90%未満 | 呼吸不全 | 緊急対応、酸素投与 |
バイタルサイン測定の報告
報告のポイント(SBAR)
- S(Situation):現在の状況
- B(Background):背景情報
- A(Assessment):アセスメント
- R(Recommendation):提案
例:「〇〇さんの血圧が180/100mmHgと高値です。普段は130/80mmHg程度です。頭痛の訴えがあります。降圧剤の投与が必要かもしれません。」
国試でよく出るポイント
- 成人の正常値は必ず暗記
- 小児の脈拍・呼吸数は年齢により異なる(小児は高い)
- 血圧測定の正しい手順
- 異常呼吸パターンの名称と特徴
- SpO2低下時の対応
必修問題の対策は、必修問題対策を参照してください。
まとめ
バイタルサイン測定で大切なポイント:
- 正常値を暗記:成人・小児の基準値
- 正しい手順で測定:誤差を最小限に
- 異常を見逃さない:ベースラインとの比較
- 適切に報告:SBARで簡潔に
- アセスメント:数値だけでなく全体を観察
バイタルサインは看護の基本です。繰り返し練習して、自信を持って測定できるようになりましょう。
看護技術の練習方法については、看護技術の練習方法も参考にしてください。