看護師国家試験 用語集・基本情報
看護師国家試験に関する基本情報と重要用語をわかりやすく解説。 国試対策の基礎知識として活用してください。
看護師国家試験の基本情報
試験概要
看護師国家試験
(かんごしこっかしけん)厚生労働省が実施する国家資格試験。看護師として働くために必須の資格を取得するための試験。
毎年2月中旬(例年2月の第3日曜日付近)に全国の試験会場で実施される。保健師助産師看護師法に基づき、看護系の大学、短期大学、専門学校等の卒業(見込み)者が受験資格を持つ。試験時間は午前・午後合わせて約5時間20分。
合格基準
(ごうかくきじゅん)看護師国家試験に合格するために満たすべき点数の基準。
必修問題で80%以上(50点満点中40点以上)を取得し、かつ一般問題・状況設定問題の合計で基準点以上を取得する必要がある。一般問題・状況設定問題の基準点は毎年の受験者の得点分布に基づいて厚生労働省が決定するため、年によって変動する。
出題科目
(しゅつだいかもく)看護師国家試験で出題される科目の総称。
人体の構造と機能、疾病の成り立ちと回復の促進、健康支援と社会保障制度、基礎看護学、成人看護学、老年看護学、小児看護学、母性看護学、精神看護学、在宅看護論、看護の統合と実践の11科目から出題される。
問題形式
必修問題
(ひっしゅうもんだい)看護師国家試験の出題形式の一つ。看護師として必ず知っておくべき基本的な知識を問う問題。
50問出題され、1問1点で50点満点。80%以上(40点以上)の正答が合格の絶対条件となる。一般問題・状況設定問題の点数に関わらず、必修問題で40点未満の場合は不合格となる。基礎的な知識や看護師として必須の判断力を問う問題が出題される。
一般問題
(いっぱんもんだい)看護師国家試験の出題形式の一つ。看護に関する幅広い知識を問う問題。
130問出題され、1問1点で130点満点。各出題科目から満遍なく出題され、解剖生理学、病態生理学、看護技術、薬理学など幅広い分野の知識が問われる。4つの選択肢から1つまたは2つを選ぶ形式。
状況設定問題
(じょうきょうせっていもんだい)看護師国家試験の出題形式の一つ。患者の事例を提示し、看護師としての判断力・思考力を問う問題。
60問出題され、1問2点で120点満点。1つの患者事例に対して複数の問いが設定される形式。患者の状態をアセスメントし、適切な看護計画を立案・実施・評価する能力が問われる。臨床現場を想定した実践的な内容が多い。
出題科目
基礎看護学
(きそかんごがく)看護の基本概念、看護技術、看護過程など、すべての看護の基盤となる知識・技術を学ぶ科目。
看護理論、コミュニケーション、フィジカルアセスメント、バイタルサイン測定、感染予防、安全管理、与薬、注射、採血などの基本的な看護技術が含まれる。
成人看護学
(せいじんかんごがく)成人期(青年期・壮年期・向老期)にある人々の健康問題と看護を学ぶ科目。
急性期看護、慢性期看護、周手術期看護、がん看護、終末期看護などが含まれる。循環器、呼吸器、消化器、腎・泌尿器、内分泌、運動器など各器官系統の疾患と看護を学ぶ。
老年看護学
(ろうねんかんごがく)高齢者の特性を理解し、健康の維持・増進、疾病の予防・回復を支援する看護を学ぶ科目。
加齢に伴う身体的・精神的・社会的変化、高齢者に多い疾患(認知症、脳血管疾患、骨粗鬆症など)、介護保険制度、高齢者虐待防止などが含まれる。
小児看護学
(しょうにかんごがく)小児期(新生児期から思春期まで)にある子どもとその家族の健康問題と看護を学ぶ科目。
小児の成長発達、小児に多い疾患、予防接種、小児の権利擁護、家族看護などが含まれる。発達段階に応じたコミュニケーションや、子どもと家族を一体として捉える視点が重要。
母性看護学
(ぼせいかんごがく)妊娠・分娩・産褥期の女性と新生児、およびその家族の健康を支援する看護を学ぶ科目。
妊娠の経過と看護、分娩の経過と看護、産褥期の看護、新生児の看護、母乳育児支援、ハイリスク妊娠、不妊治療などが含まれる。
精神看護学
(せいしんかんごがく)精神の健康問題を持つ人々とその家族の看護を学ぶ科目。
精神疾患(統合失調症、気分障害、不安障害、依存症など)の理解と看護、治療的コミュニケーション、精神保健福祉法、地域精神保健などが含まれる。
在宅看護論
(ざいたくかんごろん)在宅で療養する人々とその家族を支援する看護を学ぶ科目。
訪問看護の実際、在宅医療機器の管理、家族介護者の支援、多職種連携、介護保険制度、在宅での看取りなどが含まれる。
看護の統合と実践
(かんごのとうごうとじっせん)看護管理、医療安全、災害看護、国際看護など、看護を統合的に実践するための知識を学ぶ科目。
チーム医療、看護管理、医療安全対策、災害時の看護、国際看護協力、看護における倫理的課題などが含まれる。
看護理論
看護過程
(かんごかてい)看護を系統的に実践するための思考過程。アセスメント、看護診断、計画、実施、評価の5段階で構成される。
情報収集・アセスメントで患者の状態を把握し、看護診断で問題を明確化、計画で目標と介入を設定、実施で計画を実行、評価で目標達成度を判断する。状況設定問題では看護過程に沿った思考が求められる。
看護技術
バイタルサイン
(ばいたるさいん)生命徴候。体温、脈拍、血圧、呼吸(SpO2を含むこともある)の4つの基本的な生体情報。
成人の正常値の目安:体温36.0〜37.0℃、脈拍60〜100回/分、血圧収縮期90〜140mmHg/拡張期60〜90mmHg、呼吸数12〜20回/分、SpO2 96%以上。年齢や状態により正常範囲は異なる。
フィジカルアセスメント
(ふぃじかるあせすめんと)視診、触診、打診、聴診などの技術を用いて患者の身体状態を系統的に評価すること。
問診(主観的データ)と身体診察(客観的データ)を組み合わせて、患者の健康状態を包括的に把握する。頭部から足先まで系統的に行う方法と、主訴に基づいて重点的に行う方法がある。
注射法
(ちゅうしゃほう)薬液を体内に直接投与する方法。皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、皮内注射などがある。
皮下注射は45度の角度で刺入、筋肉内注射は90度で深く刺入。静脈内注射は血管内に直接投与するため即効性がある。注射部位、薬剤の確認、無菌操作が重要。
輸液管理
(ゆえきかんり)点滴静脈内注射による水分・電解質・栄養素の補給と管理。
滴下速度の計算、刺入部位の観察、感染予防が重要。滴下数の計算式は「総量(mL)×20(滴/mL)÷時間(分)」。輸液ポンプ使用時は流量設定の確認が必要。
無菌操作
(むきんそうさ)微生物の侵入を防ぐための技術。滅菌物の取り扱いや創傷処置などで用いられる。
滅菌手袋の着用、滅菌野の作成、滅菌物の適切な取り扱いが含まれる。スタンダードプリコーション(標準予防策)の基本となる技術。
体位変換
(たいいへんかん)褥瘡予防や呼吸・循環の改善のために患者の体位を変えること。
2時間ごとの体位変換が基本。仰臥位、側臥位、半座位(ファウラー位)、腹臥位などがある。褥瘡好発部位(仙骨部、踵部など)の除圧が重要。
口腔ケア
(こうくうけあ)口腔内の清潔を保ち、口腔機能を維持・改善するためのケア。
誤嚥性肺炎の予防に重要。意識レベル低下時は誤嚥に注意し、吸引の準備をして行う。口腔内の観察(粘膜、舌苔、歯の状態)も含まれる。
人体の構造と機能
ホメオスタシス
(ほめおすたしす)生体の内部環境を一定に保とうとする仕組み。恒常性維持機能。
体温、血糖値、血圧、pH、浸透圧などを一定範囲に維持する。フィードバック機構(負のフィードバック)により調節される。自律神経系と内分泌系が中心的役割を果たす。
酸塩基平衡
(さんえんきへいこう)体液のpHを7.35〜7.45の範囲に維持する仕組み。
肺(CO2排出)と腎臓(HCO3-調節)で調節される。アシドーシス(pH低下)とアルカローシス(pH上昇)があり、呼吸性と代謝性に分類される。
電解質
(でんかいしつ)体液中に存在するイオン。Na+、K+、Cl-、Ca2+などが代表的。
ナトリウム(Na+)は細胞外液の主要陽イオン、カリウム(K+)は細胞内液の主要陽イオン。電解質異常は不整脈、筋力低下、意識障害などを引き起こす。
自律神経系
(じりつしんけいけい)内臓機能を無意識的に調節する神経系。交感神経と副交感神経からなる。
交感神経は「闘争か逃走」反応(心拍数増加、瞳孔散大)、副交感神経は「休息と消化」反応(心拍数低下、消化促進)を担う。多くの臓器に二重支配で拮抗的に作用。
疾病の成り立ちと回復
糖尿病
(とうにょうびょう)インスリンの作用不足により高血糖が持続する代謝疾患。
1型(インスリン依存型)と2型(インスリン非依存型)がある。三大合併症は網膜症、腎症、神経障害。HbA1c 6.5%以上で診断。食事療法、運動療法、薬物療法で管理。
高血圧
(こうけつあつ)血圧が持続的に高い状態。収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上。
本態性高血圧(原因不明)が約90%を占める。脳卒中、心疾患、腎臓病のリスク因子。減塩、適正体重維持、運動、禁煙が重要。降圧薬で治療。
心不全
(しんふぜん)心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送れない状態。
左心不全では肺うっ血(呼吸困難、起座呼吸)、右心不全では全身性浮腫が生じる。NYHA分類でI〜IV度に重症度分類。利尿薬、ACE阻害薬などで治療。
脳血管疾患
(のうけっかんしっかん)脳の血管障害による疾患の総称。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など。
脳梗塞は血管閉塞、脳出血は血管破裂による。片麻痺、言語障害、意識障害が主症状。発症から4.5時間以内のt-PA療法が脳梗塞の急性期治療として重要。
認知症
(にんちしょう)後天的な脳の器質的障害により認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態。
アルツハイマー型が最多(約60%)。中核症状(記憶障害、見当識障害)と周辺症状(BPSD:徘徊、興奮など)がある。改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)で評価。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
(しーおーぴーでぃー)気流閉塞を特徴とする進行性の呼吸器疾患。慢性気管支炎と肺気腫を含む。
主な原因は喫煙。労作時呼吸困難、慢性の咳・痰が主症状。口すぼめ呼吸、腹式呼吸の指導が重要。在宅酸素療法(HOT)が適応となることがある。
健康支援と社会保障制度
医療保険制度
(いりょうほけんせいど)疾病や負傷に対する医療費を保障する社会保険制度。
被用者保険(健康保険、共済組合)と地域保険(国民健康保険)に大別。75歳以上は後期高齢者医療制度に加入。自己負担割合は年齢・所得により1〜3割。
介護保険制度
(かいごほけんせいど)要介護・要支援状態の高齢者に介護サービスを提供する社会保険制度。
40歳以上が被保険者。要介護認定(要支援1・2、要介護1〜5)を受けてサービス利用。居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスがある。ケアマネジャーがケアプランを作成。
インフォームドコンセント
(いんふぉーむどこんせんと)医療者が患者に十分な説明を行い、患者の理解と同意を得ること。
患者の自己決定権を尊重する考え方。説明内容は病状、治療法、リスク、代替療法など。患者が理解できる言葉で説明し、質問に答え、自発的な同意を得ることが重要。
アドバンス・ディレクティブ
(あどばんすでぃれくてぃぶ)将来、判断能力が低下した場合に備えて、医療やケアについて事前に意思表示すること。
リビングウィル(生前の意思表示)や医療代理人の指名が含まれる。終末期医療における延命治療の希望の有無などを記載。ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の一部。
薬理学
薬物相互作用
(やくぶつそうごさよう)複数の薬物を併用した際に、効果が増強または減弱する現象。
薬力学的相互作用(同じ受容体への作用)と薬物動態学的相互作用(吸収、代謝、排泄への影響)がある。ワルファリンとビタミンK、抗生物質と経口避妊薬などが代表例。
副作用
(ふくさよう)薬物の主作用以外の望ましくない作用。
用量依存性のものと、アレルギー性(特異体質)のものがある。重篤な副作用にはアナフィラキシー、スティーブンス・ジョンソン症候群などがある。投与前の既往歴確認、投与後の観察が重要。
抗凝固薬
(こうぎょうこやく)血液凝固を抑制する薬剤。血栓症の予防・治療に用いられる。
ワルファリン(ビタミンK拮抗薬)、ヘパリン、DOAC(直接経口抗凝固薬)がある。出血リスクがあるため、PT-INR、APTTなどでモニタリング。ビタミンKを多く含む食品(納豆など)との相互作用に注意。
インスリン製剤
(いんすりんせいざい)血糖値を下げるホルモン製剤。糖尿病治療に使用。
作用時間により超速効型、速効型、中間型、持効型に分類。皮下注射で投与。低血糖(冷汗、動悸、意識障害)が重大な副作用。シックデイ(体調不良時)のルール遵守が重要。
感染管理
スタンダードプリコーション
(すたんだーどぷりこーしょん)標準予防策。すべての患者の血液、体液、分泌物、排泄物を感染性があるものとして取り扱う感染対策。
手指衛生、個人防護具(PPE)の使用、呼吸器衛生/咳エチケット、安全な注射手技、環境整備が含まれる。感染症の有無にかかわらず、すべての患者ケアに適用。
手指衛生
(しゅしえいせい)手洗いまたは手指消毒により、手指の微生物を減少させること。
WHO の「5つのタイミング」:①患者に触れる前、②清潔/無菌操作の前、③体液に曝露された可能性のある場合、④患者に触れた後、⑤患者周辺の物品に触れた後。アルコール手指消毒が基本、目に見える汚れがある場合は流水と石けんで手洗い。
個人防護具(PPE)
(ぴーぴーいー)感染から身を守るための装備。手袋、ガウン、マスク、ゴーグル・フェイスシールドなど。
予測される曝露に応じて選択。着用順序:ガウン→マスク→ゴーグル→手袋、脱衣順序:手袋→ゴーグル→ガウン→マスク。正しい着脱が感染予防に重要。
医療関連感染
(いりょうかんれんかんせん)医療施設での医療行為に関連して発生する感染症。院内感染を含む概念。
主なものにMRSA感染、カテーテル関連尿路感染(CAUTI)、中心ライン関連血流感染(CLABSI)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、手術部位感染(SSI)がある。サーベイランスと対策が重要。
医療安全
インシデント
(いんしでんと)患者に傷害を及ぼすことはなかったが、日常診療の場でヒヤリとしたりハッとした出来事。
ヒヤリ・ハットとも呼ばれる。報告・分析・対策により重大事故(アクシデント)を予防する。インシデントレポートの提出は懲罰目的ではなく、医療安全の向上が目的。
医療過誤
(いりょうかご)医療従事者の過失により患者に損害を与えること。
投薬ミス、患者誤認、手術部位間違いなどがある。6R確認(正しい患者、正しい薬剤、正しい量、正しい時間、正しい方法、正しい記録)で予防。ダブルチェックの実施も重要。
転倒・転落予防
(てんとうてんらくよぼう)患者の転倒・転落事故を防ぐための対策。
転倒リスクアセスメント、環境整備(手すり、ベッド柵、照明)、履物の選択、センサーマットの使用などが含まれる。特に高齢者、認知症患者、鎮静薬使用患者はハイリスク。
倫理
患者の権利
(かんじゃのけんり)患者が医療を受ける際に保障されるべき権利。
良質な医療を受ける権利、自己決定権、プライバシーの保護、セカンドオピニオンを求める権利、診療情報の開示を求める権利などが含まれる。リスボン宣言(患者の権利に関するWMA宣言)が国際基準。
守秘義務
(しゅひぎむ)業務上知り得た患者の秘密を他者に漏らしてはならない義務。
保健師助産師看護師法第42条の2に規定。退職後も継続。違反した場合は6月以下の懲役または10万円以下の罰金。個人情報保護法も関連する。
自律尊重の原則
(じりつそんちょうのげんそく)患者の自己決定を尊重すべきという倫理原則。医療倫理の4原則の一つ。
医療倫理の4原則は、自律尊重、善行、無危害、公正。患者が十分な情報を得た上で自ら決定する権利を尊重する。パターナリズム(父権主義的医療)とは対照的な考え方。